わっぱ にっき

活動と創作の記録

体験展示イベントをマネジメントする

 こんにちは。wappaboyです。東京大学VRサークルUT-virtualの代表をやっております。
 今回はUT-virtual Advent Calendar 2018 - Qiitaの12月24日の記事として「体験展示イベントをマネジメントする」ことについての意見や得たノウハウを書こうと思います。
 僕からのクリスマスプレゼントです。

 以下のような流れで話を進めます。

はじめに

 世の中には大なり小なり様々な体験展示イベントがあり、毎日世界のどこかで誰かの作品が誰かに鑑賞され、体験されています。小さなもので言えば『昨日描いた絵を友達に見せる』だとか『自作したゲームをインターネットに公開する』、あるいは大きく言うと映画館とかディ〇ニーランドも体験展示の機会です。

 今回お話しする体験展示は、僕が個人展示やサークル展示を経験した上でまとめるものなので、規模感としては来場者100人~1000人程度の中規模なものです。学生団体の展示イベントや個人出展の際に参考にしていただければ嬉しいです。

実技編

 準備・当日・反省すべてにおいて意識的に分けて考えておくべき2つのことがあります。

 「一般的な体験展示に共通すること」
 「今回の展示に特有のこと」

です。
 この2点を分けずになんとなく進めると、自分がやりたいイメージと実際の展示がなんだか違うものになってしまったり、お客さんを満足させるに不十分な準備・当日対応になってしまいます。また反省も次の展示にどう活かせるのかが不透明なものになってしまいます。

 反省については、特に大学サークルや作品制作団体が毎展示ごとに違う作品を作っている場合をイメージすれば分かりやすいかもしれません。「一般的な体験展示に共通すること」が何なのか意識しないと作品展示のノウハウとして効率よく生かすことはできませんし、「今回の展示に特有のこと」であるという認識がなければ別作品の展示に通用しないノウハウまで引き継いでしまいます。

 この2つの区別が曖昧な『反省点の羅列』を生み出すことで満足してしまいます。

 各々の展示に特有のことについてはここでは書けないので、「一般的な体験展示に共通すること」について、作品を作り始めるところから体験展示し、次につなげるところまで書いていきます。

体験をつくる

 体験を作りたいと思ったときって、「あ、これ出来たら面白そう!楽しそう!」「これ使ったら何か綺麗なことが出来るんじゃないかな...」といった感じだと思います。その発想を実現し、他人に共感してもらうために最初するべきことがあります。それは、

 体験者に感じてほしい感情・感覚を明確にする

ということです。

 お客さんが体験を終えたときに、一番感じてほしい感情。楽しかった、気持ちよかった、悲しかった、気味が悪かった、ドキドキした...
 これが制作者の中で明確であれば、作品作りがとてもやりやすくなると思います。

 上のことが一番大事かなと思うので、体験をつくる上での他の注意点は箇条書きにします。

  • 本番から逆算して余裕のある開発スケジュールをひく
  • 年齢・性別・体験者の状態のパターンをイメージする
    • 子供も満足に体験できるか?(体の大きさ・ちから・漢字や英語)
    • 性別に関係なく不快感なく体験できるか?(髪型・スカート・メイク・ヒールの靴)
  • お客さんの導線を考慮した会場レイアウトを考える
    • 入り口と出口は一緒か別か?
  • 当日メンテナンス性の高い仕組みをしているか?
    • 故障やトラブルに即座に対応しやすい設計

体験を知ってもらう

 どれだけ頑張って体験をつくっても、展示の存在を知ってもらわないことにはお客さんは来ません。特に学校の文化祭や複数の企画展示があるイベントでは、他の展示がある中でお客さんの目を引くような工夫をしなければいけません。
 まずはそもそも

 何が体験できるのかが一目でわかるように

 しましょう。これは展示のネタバレをしろというわけではありません。少なくとも「体験のビジュアル」「内容」「体験で感じる感覚・感情」等のどれかは提示しなければそもそも通りかかったお客さんに「面白そう!」とも思ってもらえません。以下箇条書きで広報のアイデアを並べます。

  • 入り口付近で動画を流し何をやっているのかを端的に伝える
  • 会場から流れる音で引き付ける
    • 今体験している方の音をそのまま外に聞こえるようにするでも効果アリ
    • 雰囲気づくりの会場BGMを流す
  • SNSを積極的に活用する
    • Twitterで事前に体験開始時刻を告知したり展示の様子を実況したりする
    • イベントハッシュタグをつけたり、展示に関連するキーワードのタグをつける
  • 目を引くキービジュアルを作りビラやSNSの投稿画像に利用する

体験を楽しんでもらう

 来てくれたお客さんが快適に体験できるように、あらゆる点で最善を尽くすよう努力すべきだと考えます。体験のアテンドも含めお客さん対応で一番大事なことは

 笑顔で元気に接客する

 ことだと思います。展示スタッフが不愛想だとせっかくの作品の印象も(よほど良すぎる作品を除いて)悪くなってしまいます。正直これは作品の本質ではないのは事実ですが、相手が人間であり、見てくれる人あっての作品でもあるので気を付けたい点ではあります。

 その他細かい点が多いですが、「体験を楽しんでもらう」ための注意点として僕が経験したことも踏まえていくつか箇条書きにします。

  • お金のやり取りがある場合は慎重に
    • 箱を用意するなどしてお金の管理をしっかりする
    • 返金を想定する
  • 展示のスタッフを他の人に手伝ってもらう時にはマニュアル作成し共有する
    • 作った自分にとっては当たり前でも制作に携わっていない人には分からないことが多いため
  • 整理券の有無
    • 整理券を作ればお客さんは長時間並ばなくて済む。展示ブースがすっきりするため不人気の企画に見えることもあるのが難点。
    • 整理券がなければお客さんを待たせてしまう場合がある。長い列ができた場合は人気企画だと一目でわかるという利点はある。
  • 来場者が付き添いなのか体験者なのかがわかるように
    • 受付スタッフと体験アテンドのスタッフが異なる場合はこれの伝達が必要
    • リストバンドを用意して一目でわかるようにするなど
  • 待ち時間はできるだけ短く、あるいは待ち時間にも楽しめる工夫を
    • 待ち時間に体験の説明動画をみせるなど
  • 会場づくり
    • 整理整頓・清潔を心がける
    • スタッフの荷物が見えないようにする
  • トラブル時の対応を考える
    • 待っていたお客さんがいた場合は特別整理券の配布、有料企画の場合は払い戻し
  • バッテリーを伴う展示の場合充電問題に気を付ける
  • 展示の前日は、寝ろ

次につなげるために

 今回の体験展示でいくつか問題点や改善すべき点が浮き彫りになるはずです。実際の展示イベントを経た知見の蓄積は、特に連綿と世代が受け継がれていく学生団体などにおいては、団体が進化していくための貴重な財産になります。
 まず思い出してほしいのが、冒頭に述べた意識的に分けて考えるべき2つのこと

 「一般的な体験展示に共通すること」
 「今回の展示に特有のこと」

です。これらを区別する意識は反省の際に特に大事になると考えています。いろいろなやり方があると思いますが、僕がよく意識して分けている反省項目は以下です。

  1. 事前運営
  2. 事前開発
  3. 今回の展示に特有のお客さん対応/会場づくり
  4. 一般的な体験展示に共通のお客さん対応/会場づくり
  5. 完成コンテンツの質(お客さん視点で)
  6. 片付け


また、その他反省をやりやすくするためにイベント開催中に工夫できることがあるとしたら

  • 感想ノートを出口に置いておく
  • スタッフが展示中に気が付いたことをメモする場所を決めておく
    • 人間忘れる生き物なので...
    • 紙でもいいし、共有しやすいオンラインドキュメントでもいい

があるかなと思います。

 以上で「実技編」と称した、一般的な体験展示イベントに共通しそうなノウハウは終わりです。最近はコンピュータや最新のテクノロジーを使った体験展示も多いので、猛スピードで移り変わる時代の流れに合わせてこういった知見もどんどん更新されていくように思います。

 ここに書いたことが皆さんのイベント運営を豊かにすることを願っております。

精神編

 精神編とはいっても、大学生活で7回くらいの体験展示をプロデュースして僕自身が感じたことを言うポエムのようなものです。体験展示をするうえで大事だなと感じるマインドを書かせてもらいます。特に作品作りに自信が持てない方や迷いのある方が「ふーん」って感じで読んでくださるとうれしいです。

なぜ体験展示をするのか?

 そもそもあなたはなぜ作品を創造するのでしょう?感情を吐き出すため?誰かに見てもらって自己承認欲求を満たすため?所属団体に義務づけられたから仕方なく?

 恐らく、そんな理由付けはどうでもよいです。素直に「つくりたいからつくる」「見てほしい、遊んでほしい、褒めてほしいからつくる」「課題や依頼のためにつくる」でいいと思います。ただ、制作者にどういう思いがあるにせよ、その作品を展示して他人に体験してもらう場合はもう一段階思考する必要があります。

 なぜなら、自分だけでなくお客さんの「時間」が介入してくるからです。他人が時間を割いてくれるのだから、ひとたび自分でやると決めたからには満足な作品をつくる努力をしましょう。イベントのあとに結果的に自分や仲間たち、お客さんが満足できたかどうかは実際そんなに一喜一憂しなくて大丈夫です(反省はしっかりしましょう)。

イベントを成功させるために

 「お客さんに楽しんでもらうこと」も大切ですが、「自分と仲間が楽しいこと」もやはりとても大切です。

 ここでは詳細には書きませんが、自分や仲間たちが楽しく事前準備・イベント当日を進めるために挙げられることとしては

  • 計画的で余裕のある準備期間を事前に練る
    • 無理のある開発はメンバーにストレスを与えるのでリーダーが計画頑張ってください
  • 当日きつめのシフトにならないよう調整する
    • 人数の問題から難しいこともあると思いますが、休憩はしたほうがいいです
  • メンバー間でコミュニケーションをしっかりとる
    • リーダーにとっては当然でもメンバーには想像もできないこともあるのでこまめに情報共有をする

 「自分と仲間が楽しむ努力をする」ということは意外とおざなりにしがちです。あなたがプロジェクトのリーダーでそれに賛同してくれる仲間がいるなら、その仲間たちが楽しんで体験をつくり、展示が出来るようにアレンジできるといいですね。

おわりに

 以上、長くなってしまいましたが僕からのクリスマスプレゼントでした。

 インターネットが普及し、作品制作ツールもどんどん安価でハイレベルになっています。作品を作って公開するハードルがどんどん下がっていき、「一億総クリエイター時代」ともいわれる中、一方で没個性やアイデア・センスの枯渇で悩む人も増えてきているように感じます。

 僕もそんな迷える子羊の一人かもしれませんが、腐らずにいろんな作品に触れて感性を磨き、誰かの心を動かすようなものを創り続けられたらなと思います。


余談ですが、体験展示の中でも特にVR企画に関することはUT-virtual部員のyunoLv3くんが以前記事にしています。良記事です。
yunolv3.hatenablog.com